初めに北九州国際音楽祭事務局長の平野氏より今年の音楽祭についての簡単な説明がありました。そして、北九州国際音楽祭のアドバイザーでもある音楽評論家の奥田佳道の紹介が行われ、いよいよメインである今年の音楽祭の聴き所が語られました。
★今年のテーマは?
18年目を迎える音楽祭には毎年テーマがあり、今年は“傑作の森を訪ねて−。”となっているそうです。
この「傑作の森」は、次のような意味を含んでいるといいます。
ひとつに、ベートーヴェンには傑作が沸々と湧き出てくるような「傑作の森」と言われる時期があるということです。奥田氏は、今回の音楽祭ではその時期に作られた曲を含む、名曲の数々(=名曲の森)を新世代のアーティストが演奏する面白さを挙げられました。
また、森と湖の国・フィンランドからのオーケストラ、舘野泉氏の来北、さらに、音楽祭では初めてのオペラとなるモーツァルトの歌劇「魔笛」がバーデン市立劇場により上演されるとのこと。バーデン市は、世界中から観光客の集まる歴史有る温泉保養地でもあり、モーツァルトやベートーヴェンがこよなく愛した“ウィーンの森”でもあります。
★オペラ“究極の歌芝居・魔笛”
「魔笛」は、ヨーロッパで最も人気のあるオペラで、歌芝居の最高傑作でもあり、動物が出たりするおとぎ話で、子供(初心者)でも純粋に楽しめ、世代を問わず楽しめるオペラだそうです。
奥田氏は、「そんな魔笛が音楽祭初のオペラとして上演されるのはとても楽しみでもあるし、華やかなオープニングのプログラムを飾るとなると想像しただけでもワクワクしますね。」と皆さんを誘われました。
「魔笛」には、作曲当時モーツァルトが入会していた秘密結社“フリーメーソン”(現代のロータリークラブのようなもの)の影響もみられ、同社の儀式性や<自由・平等・博愛>の3つの精神があちこちにちりばめられているとのこと。
これらの3つの秘密(3人の侍女や童子、楽譜に書かれた3つの和音など)を探しながらオペラを楽しんでみるのも一つの方法だそうです。
それから、今回は公演前に奥田氏によるレクチャーとバックステージツアーを行う企画があるそうです。日頃なかなか見ることが出来ない舞台裏に潜入し当日のセットやオーケストラの様子をご覧になることで、ますます舞台への思いを膨らませてもらえるだろうとのことでした。
★森と湖の国から「フィンランド放送交響楽団 指揮:サカリ・オラモ」
現在、世界のオーケストラでは世代交代が進んで新しい才能が続々と出てきているそうです。その中で、世界の音楽関係者が最も注目している地域は世間一般に本場と思われているドイツやウィーンではなく間違いなく北欧、中でもフィンランドなんだそうです。
そのフィンランドから、今をときめく指揮者とオーケストラが音楽祭にもやって来るそうです。
フィンランド放送交響楽団は、 “世界のトップ放送オーケストラ”というテーマを掲げたNHK音楽祭(今秋)にも参加が予定されており、今後が大いに期待されているそうです。
指揮のサカリ・オラモは、サイモン・ラトルの後任として英バーミンガム市響にも招かれ、イギリス国内外で数々の公演を大成功させたほどの若く才能溢れる指揮者だそうです。そのような世界が注目し、新しい時代を象徴するオーケストラと指揮者が演奏するベートーヴェンの傑作「英雄」を楽しみにしていただきたいとのこと。
もう一つのお楽しみは、没後10周年というメモリアルの意味を込めてプログラムに加えた武満徹の「ウォーター・ドリーミング」にあるそうです。
この曲でフルートのソロを任されたペトリ・アランコは、昨年の音楽祭に登場したあのエマニュル・パユと神戸の国際コンクールで1位を分け合ったほどの俊英で、彼のソロにも期待が持たれるとのことでした。
★オリジナル企画の「篠崎史紀とウィーンの仲間たち」
今年の音楽祭のもう一つの大きな柱に、オリジナル企画の「篠崎史紀とウィーンの仲間たち」
があるそうです。
篠崎氏は、北九州市出身でもあり響ホールではすっかりおなじみですが、今回は、音楽祭の特別企画として、旧知のウィーン・フィルのメンバーとの室内楽をやりましょう、ということになり、フランツ・バルトロメイ氏(ウィーンフィルの首席チェロ奏者)、エルマー・ランデラー氏(ウィーン・フィルの首席ヴィオラ奏者)らとのアンサンブルが実現されたそうです。
バルトロメイ氏と篠崎氏とは親子ほど年齢が離れていますが、深い絆で結ばれた演奏家同士で、ウィーンでは、時折、室内楽を演奏されているそうです。
せっかくバルトロメイ氏が北九州市に来られるのなら、音楽祭が長年、力を入れている教育プログラム(この場合、幼稚園訪問コンサートと小学生の鑑賞教室)にも出演をお願いしたところ、このプログラムの意義を深く理解して下さり、今回のプログラムが可能となったそうです。
さらに、ウィーンでよく行われているお城などでのコンサートの雰囲気を再現するようなプログラムも是非やりたいということで、バルトロメイ氏には、西日本工業倶楽部で行われるサロンコンサートもお願いされたそうです。
こちらは少し短いプログラムではありますが、100人のお客様の為だけに弾いてもらえるというとても贅沢なひとときでもあり、なんと演奏の後でバルトロメイ氏を囲んでお茶を飲みながらお話しする時間もあるのだとか!(11月10日
フランツ・バルトロメイ 西日本工業倶楽部での公演は、完売いたしました。あしからずご了承下さい。)
こういったことができるのも、音楽祭を長く続けていているからこそ実現できた企画なのだと奥田氏は言われていました。
★「ブルーノ・レオナルド・ゲルバー」
アルゼンチン出身でアルゲリッチと同じ門下、ブルーノ・レオナルド・ゲルバーのピアノリサイタルも行われます。
彼はベートーヴェン弾きのピアニストとしても知られており、当日の曲目は、巨匠に相応しい選曲(今回のプログラムはどれもゲルバーの十八番)で、王道のリサイタルだそうです。
★世界に羽ばたく女神たち
今年の音楽祭では、ザルツブルクで開催されたモーツァルト国際ピアノコンクールに、日本人で初めて優勝した菊池洋子氏によるフォルテピアノのコンサートもあるそうです。
フォルテピアノはピアノの前身ですが、その音を耳にする機会は多くありません。
奥田氏は、「ピアノのようにキンキンしている訳ではないけれど、1つ1つの音が粒だっている(ご飯で言うなら、おいしく炊けたときにお米が立っている)ような音です。」と紹介されました。

19世紀という時代は、産業の変化と共に音楽を聴く環境もどんどん変わり、鍵盤楽器も進化し、それまでより音色の変化が求めやすいフォルテピアノが誕生したというお話もありました。
菊池氏は、現在、世界中のアーティストがこぞって共演を申し込んでいるピアノニストであり、今後テレビなどの出演予定も多く、ブレイクするであろうピアニストの一人だと言われているそうです。是非、この響ホールで菊池氏の演奏に直に触れてもらいたいという狙いもあっての企画だそうです。
奥田氏は、「音楽祭のあり方として無名の新人を発掘する楽しみもある。」と言われ、カーネギーホールなどでは”ホールが推薦するアーティストならば“と信頼して聴衆の皆さんが集まるという事例を紹介されました。
そして、まもなく20周年を迎えようとしているこの北九州国際音楽祭もそういったような存在になって欲しいという願いを込めて、この音楽祭から大きく羽ばたいていくアーティストをみなさんと共に見守っていきたいと語られました。
同様の理由で、北九州市在住の南紫音(高校1年生)によるヴァイオリン・リサイタルも企画されたそうです。
奥田氏は、「南氏は中学3年生の時に、昨年イタリア・ナポリで行われた国際ヴァイオリン・コンクールで優勝したという相当な実力の持ち主です。彼女が将来の名ヴァイオリニストになった時、必ずやそのデビューを北九州国際音楽祭で果たしたことを振り返るでしょう。その記念となるデビューの瞬間を、是非、みなさんとご一緒できればと思っています。」と暖かな眼差しで語られました。
いよいよ、ラストを飾るグランドフィナーレには、世界が喝采するヴァイオリンの才媛・庄司紗矢香がイタマール・ゴラン(ピアノ)と共に北九州に初登場されます。
しかも、本来、コンサートの“おおとり”を飾るような曲を、3曲連ねた夢のようなプログラム。まさにフィナーレを飾るに相応しいというお話にはみなさんも納得の様子でした。

★勉強会を終えて…
今年の音楽祭は例年にも負けない豪華なラインナップで、しかもサロンで音楽を聴く楽しみ・劇場でオペラを見る楽しみ・室内楽の専用ホールである響ホールで聴く楽しみ・・・といった様々な楽しみを含んだプログラムが用意されております。
もちろん、ここで紹介した以外にも公演についての魅力的なお話が満載でどれを聴きに行こうか迷ってしまうほどです。
勉強会を終え、開催の日がますます待ち遠しくなりました。
(於:2005.7.25)
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