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 〜時空を超えて私たちの心を揺さぶる名曲の数々、実力派アーティスト続々登場!〜 奥田佳道(音楽評論家) ◆

 ファン憧れのアーティストが個性を奏でる華やかな音楽祭。さあ、この究極の晴れ舞台で、一体どんな名演奏が誕生するのでしょうか。選ばれた空間と時の流れのなかで開催される音楽祭は、いつだって私たち聴き手の心を舞い上がらせます。この非日常の祝祭が演奏家や私たち聴き手に与える好影響は、まさに計り知れません。

 さあいよいよ、北九州国際音楽祭の季節が近づいてきました。今や九州はフェスティヴァルの聖地となった感があり、別府アルゲリッチ音楽祭、ゆふいん音楽祭、宮崎国際音楽祭、霧島国際音楽祭&講習会、そして北九州国際音楽祭へと、熱い眼差しが注がれるようになりました。これら九州発の祝祭の日々は、創造の喜びに満ちたその内容や熱い演奏もさることながら、地元ファンやボランティアの方々と相思相愛の関係を築いているようで、本当にうらやましい限りです。

 北九州国際音楽祭は、今年15周年という記念の年を迎えました。ここ数年、聴き手との絆をさらに深めている北九州国際音楽祭の、思わず笑みがこぼれる企画をどうぞ心ゆくまでご覧ください。テーマは「時空を超えて」。名曲とその演奏スタイルの変遷を見つめながら、昨今レパートリー、演奏スタイル、アーティストの面で好ましい広がりを見せている「クラシック音楽」を様々な角度から紹介し、多くの方に楽の音の喜びを味わっていただこうという願いが込められています。このテーマにふさわしい実力派のアーティストが顔を揃えました。

 まさに今が旬、世界の檜舞台に踊り出たマエストロとオーケストラが文字通りスペシャルなプログラムを携えてやってくるばかりでなく、古典やロマン派音楽の「あり方」を新たな視座で問い直す内外の名匠たち、そして室内楽、弦、ブラス、さらに宮廷楽器として伝わった笙(しょう)の達人が勢揃い。史上最高のリート・デュオが十八番を惜しげもなく並べれば、フェスティヴァルならではの豪華「響宴」、ギターの師弟共演も実現します。磨き抜かれたテクニックと感性でジャンルをひらりと飛び越える愛すべきコラボレーターたちも、負けじと名を連ねました。

 フィンランド出身の俊英サカリ・オラモ(1965年生まれ)が指揮するバーミンガム市交響楽団が開幕を告げます!サイモン・ラトルとともに躍進し、イギリスのみならずヨーロッパのトップオーケストラのひとつに数えられるようになったバーミンガム市響と、ラトルとは異なる美学で同響のサウンドをさらにみずみずしく息づかせ好評さくさくのオラモ。シベリウスのCDで、各地のコンサートで、彼らの躍進がとまりません。私たちはここで21世紀のクラシック界をリードするであろう指揮者とオーケストラの、溌らつとした演奏に耳を傾けるのです。しかもダン・タイ・ソンと諏訪内晶子が祝祭に華を添えることになりました。二人が揃うのはこの夜だけ、北九州国際音楽祭でしか聴けません。

 楽都ウィーンで結成された「アート・オブ・ブラス・ウィーン」が会期前半の主役を嬉々とした表情で演じることでしょう。この究極のブラス・クインテットはアンサンブルの素晴らしさを10代の若者たちと分かち合うべく、教育プログラムにも腕を振るいます。

 ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトなどの音楽を作品が書かれた時代、つまり18世紀後半・19世紀初頭の演奏スタイルに立ち返って再現し、さらにそこに現代の息吹を添える名手の中の名手もやってきます。バロック・チェロの第一人者で、ヨーヨー・マなどのバッハ演奏にも絶大な影響を与えた巨匠アンナー・ビルスマ。彼を中心とした弦楽トリオ「ラルキブデッリ」のコンサートをどうぞお聴き逃しのないように。ユニークなアンサンブル名は、羊の腸で作られたガット弦で演奏する弦楽、という意味のイタリア語の造語です。

 一方、日本が世界に誇るピリオド(時代)楽器の名手で、つい先日衝撃の東京デビューを果たした「オーケストラ・リベラ・クラシカ」の創設者・指揮者でもあるチェロの鈴木秀美とフォルテピアノの小島芳子による「ロマンスの夕べ」も、小品再発見の旅に誘ってくれることでしょう。香(かぐわ)しく、雅びなロマンスに酔いしれるひととき。

 現代最高のヴァイオリニストでパリ音楽院教授でもあるカントロフとパリの仲間たちによるベートーヴェン名曲選、そしてこの上なくゴージャスな響きを紡ぐ「ベルリン・フィルハーモニー・ヴァイオリン・アンサンブル」によって、私たちは室内楽の「魔境」を体験することになるのではないでしょうか。さらに、心に染み入る弦の調べといえば、ヴァイオリンの川畠成道の独壇場!味わい深く、語りかけるようなヴァイオリン、本当に素晴らしいです。福田進一と大萩康司の夢の共演は日曜午後で、こちらもチケットの争奪戦が繰り広げられそう。

 そして……ドイツ・リート(歌曲)は今、白井光子とハルトムート・ヘルで聴かないことには何も始まりません。ヨーロッパ音楽の精髄がここにあります!

 今ほどクラシック音楽を聴く楽しみが広がりを見せている時はありません。私たちが愛してやまないクラシック音楽は今、作品の本質に寄り添うべく誠実な活動を繰り広げるアーティスト、名曲を高らかに、しなやかに、夢見るように奏でる次代を担うアーティストという新たな翼を得て、飛翔しようとしているのです。

 「時空を超えて」私たちの心を揺さぶる名曲の数々。ライヴの喜び、コンサートに足を運ぶ楽しみ、ここに極まれり。北九州国際音楽祭へようこそ。)

〜奥田佳道(音楽評論家)

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