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≪ナビゲーター≫ 山本百合子[福岡教育大学准教授]


2021年10月30日(土)
15:00開演(14:00開場)

[公演時間:2時間30分]

北九州市立響ホール
(北九州市八幡東区平野1-1-1)


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チケット料金[全席指定席]


一  般 4,000円(前売)
U-25(25歳以下) 2,000円(前売)

※当日500円増 ※U-25=25歳以下(1995年以降生れ)、入場時本人により証明書要提示
◆チケットぴあ [Pコード:196-874] 
◆ローソンチケット[Lコード:83534]


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番組


筑前琵琶 敦盛  
     奥村旭翠#

能 (舞囃子) 敦盛 
  シテ 金剛龍謹
   笛 竹市 学*
  小鼓 成田 奏
  大鼓 河村眞之介*
  地謡 今井清隆*
     豊嶋晃嗣*
     宇高竜成

長唄 八島落官女の業
   唄 杵屋勝彦*
     杵屋喜三助
 三味線 杵屋勝九郎
     今藤敏之
  囃子 中村壽鶴
     藤舎悦芳
     中村壽慶
   笛 藤舎伝生

筑前琵琶 那須与一
     奥村旭翠

能 (舞囃子) 八島
  シテ 金剛龍謹
   笛 竹市 学
  小鼓 成田 奏
  大鼓 河村眞之介
  地謡 今井清隆
     豊嶋晃嗣
     宇高竜成

日本舞踊 静と知盛
  立方 若柳吉蔵
   唄 杵屋勝彦
     杵屋喜三助
 三味線 杵屋勝九郎
     今藤敏之
  囃子 中村壽鶴
     藤舎悦芳
     中村壽慶
   笛 藤舎伝生

司会・解説 山本百合子(福岡教育大学准教授)

#印…人間国宝
*印…重要無形文化財総合指定認定保持者

※やむを得ぬ事情により、演奏者、曲目の一部が変更になる場合もございます。あらかじめ、ご了承ください。


『平家物語』をめぐる邦楽・邦舞

 現代人の多くが中高生時代の古典文学の教科書で出会い、日本の軍記物の代表作として親しんでいる『平家物語』は、特定の文筆家の手によって文字に書き記されて誕生した文学ではなく、人から人へ声によって語り継がれて成立したとみられる物語だ。十四世紀前半(鎌倉時代末から室町時代初期)頃に吉田兼好がしたためた随筆『徒然草』の二二六段には、比叡山延暦寺の座主地鎮和尚のもとで遁世生活をしていた信濃前司行長が、百年程前に滅亡した平家一門の興亡の経緯を東国出身の盲僧生仏(しょうぶつ)に語らせた…とあり、これが『平家物語』の起源説のひとつとされてはいるが、八世紀頃から出現した琵琶法師(琵琶を携えて檀家や市井に赴き、経文や釈文を語って仏事や布教の一端を担った盲僧)が、仏教的な世界観や教訓を含みつつ劇的で娯楽的な要素の豊かな題材である平家の逸話を余興として語るようになった「平家琵琶(平曲)」という語りもの芸能が『平家物語』を成立させたとも考えられている。

 目で読まれるのではなく、声に出し耳で聴かれて受け継がれてきた『平家物語』は、その後多くの日本の音楽や舞踊に様々な題材が採用されてきた。

 その代表種目が能楽。室町時代から安土桃山時代の武士に愛好されて育まれた能は、主人公や題材から作品が大きく五つに分類されるが、その一つが「修羅物」と呼ばれて武将の亡霊を主人公とする。仏教を尊びながらも戦場で少なからぬ敵を討ち倒しこの世を去った武将の霊が生前の武勇を誇りつつ、犯した殺生の罪によって修羅道を彷徨い、成仏を願って僧侶の前に出没する。こうした修羅物の能は平家の武将や平家の興亡に関わる人物が登場する作品が大変多い。

 本日舞囃子の形式で上演される二番の能のうち一つ目の《敦盛》は、平清盛の甥(清盛の弟経盛の末子)で、弱冠十六歳で一の谷の合戦の平家軍に加わり熊谷次郎直実に討たれた平敦盛を主人公にした、世阿弥作の能である。敦盛は、祖父平忠盛が後鳥羽院から賜った名笛を父経盛から受け継ぎ、それをよく吹いた笛の名手であり美貌の若武者として伝えられているが、能ではその美しく年若い敦盛を討ったことを心に抱え出家して蓮生と名乗る熊谷直実の前に敦盛の亡霊が現れる。須磨の一の谷を訪れて敦盛の菩提を弔おうとした直実に、敦盛の霊は「戦の時は敵であったが、今となっては同じ戦乱の時を生きて世の無常をかみしめ、仏縁に結ばれた友である」と告げる。舞囃子では、能の後半の、在りし日の美しい若武者姿の敦盛が戦で討ち死にする前夜に平家の陣内で管絃を奏でて雅やかに遊んだ宴の様子を懐かしんで舞う様と、その後、敵に討たれた壮絶な場面とが描写される。

 本日のプログラムでは、まずこの舞囃子と、それに先立ち、九州独自の琵琶法師の流れや三味線音楽の表現も取り入れて明治期に成立した筑前琵琶が『平家物語』の敦盛の討ち死と直実の出家の経緯を語り伝える名曲《敦盛》の二曲をお楽しみ戴き、同じ題材を、独り弾き語りする琵琶楽と後日談として舞踊劇化している能の、表現やテーマを比較しながら味わう機会としたい。

 『平家物語』の中から名場面を芸能化した作品として、プログラム前半の三曲目と後半の一・二曲目は、屋島の合戦にまつわる三作品(三種目)をお楽しみ戴く。平家が拠点を置いた屋島(本日上演される金剛流の能と長唄作品では「八島」と表記)を望む讃岐の浜に、義経率いる源氏軍が集結し、義経軍の奇襲により船で海上に逃げ出した平家軍と対峙する場面は、登場人物やエピソードが多く、音楽や舞踊に作品化される際にも、どの人物の心情やエピソードを扱うかで描かれ方やテーマも少しずつ違ってくる。

 長唄は、江戸時代に町人の娯楽文化として花開いた歌舞伎舞踊の地として演奏される曲が多い種目だが、《八島落官女の業》も、文政十三(一八三〇)年、江戸中村座で中村芝翫が演じた変化舞踊の中の一節である。平家の滅亡後に屋島の浦に生き残った官女が、今は海女となって身売りさえしながら、安徳天皇を祀った平家の官女として華やかに勇ましく生きた昔を思う様を唄う。女性の色艶や華やかな情景が喜ばれる町人文化の中に描かれる屋島の風景だ。休憩を挟み、プログラム後半の一曲目の筑前琵琶は、屋島の合戦で最も良く知られる《那須与一》のエピソードを語る。海上へ逃げ伸びた平家方の舟から挑発するように示された扇の的を、源氏軍の若武者那須与一が見事に射落とす名場面は、『平家物語』冒頭の「祇園精舎」と同じぐらいよく知られている。そこに描かれているのは、俄に命がけの重責を命じられた若者の心の葛藤や、見事な業で役目を果たした若者への敵味方を超えた称賛の情景で、那須与一本人とそれを見守る多くの人々の心情が、語りによる光や風や色の繊細な描写にも現れている。続いて二曲目は、舞囃子による能《八島》。都から屋島を訪れた旅の僧が浜の塩焼き小屋の漁師に宿を借り、都を懐かしむ漁師から屋島の合戦の故事を聞く。夜半になってその漁師が、屋島で武勇を奮った義経の亡霊として現れ、流してしまった弓を決死の覚悟で取り戻した一件と、死後の修羅道での苦しみを語る。これも世阿弥作と伝わる能で、舞囃子では後シテ義経の亡霊が修羅道で敢然と戦い続ける姿を描く。後に兄に討たれる悲劇を負っている義経だから尚更ではあるが、能《八島》の中の義経は、戦に勝ってもなお苦しみ続ける人間の姿の象徴であり、時代を超えて人間社会に強いメッセージを与える作品となっている。

 そして、プログラム最後の日本舞踊《静と知盛》は、平家討伐に手柄を立てながら平家滅亡後に兄に疎まれて命を狙われている義経が、兄の鎌倉方の追手から逃れようと静御前と涙の別れの宴を経て船に乗り込んだところ、壇ノ浦で滅した平知盛の怨霊が現れて義経に襲いかかるという筋立ての能《船弁慶》をもとに生まれた長唄舞踊作品。もとは明治十八年に初演された歌舞伎《船弁慶》で、翌明治十九年に坂東三津之丞が舞踊《静と知盛》の題で舞踊作品として上演している。《船弁慶》の物語の登場人物のうち、義経との別れを哀しむ静の姿と、滅ぼされた恨みをもって義経に襲いかかる凄まじい知盛の亡霊という正反対な二つのキャラクターを、一人の踊り手が演じ分けるところが見所の舞踊作品である。

 中世・近世・近代に育まれた各種の邦楽・邦舞によって多彩に演じられる『平家物語』の名場面、どうかじっくりとご堪能戴きたい。

解説 山本百合子 福岡教育大学 准教授(日本音楽史)

紹介


奥村旭翠[筑前琵琶]


1951年大阪市生まれ。日本の伝統音楽の一つである筑前琵琶に魅せられ、22歳のとき山崎旭萃(きょくすい、後に人間国宝)氏と出会い弟子入り。1996年大阪文化祭賞に輝き、2007年に筑前琵琶日本橘会「大師範」となる。2013年の伊勢神宮式年遷宮に当たり琵琶曲を奉納し、2016年に重要無形文化財(人間国宝)に認定された。藤井寺市で旅館を経営。日本琵琶楽協会関西支部長、筑前琵琶連合会常任理事。びわの会を主宰。


若柳吉蔵[日本舞踊/若柳流宗家家元]


1970年、父、三世宗家二代 若柳寿童の三男として京都に生まれる。1987年、流儀の由緒ある名跡、「吉蔵」を継ぎ、1997年、五世宗家家元となる。日本舞踊協会主催公演や国立劇場主催公演に数多く出演。他流の精鋭の舞踊家達共、積極的に共演し活動している。京都・宮川町で毎年、春の「京おどり」秋の「みずゑ会」の振付、指導も担当する。2020年第63回日本舞踊協会公演「綱館」に出演。第58回文化庁芸術祭新人賞、第63回文化庁芸術祭優秀賞等受賞。


金剛龍謹[能楽/金剛流若宗家]

1988年、金剛流二十六世宗家金剛永謹の長男として京都に生まれる。5歳で仕舞「猩々」にて初舞台。以後「石橋」「鷺」「翁」「乱」「道成寺」「望月」「安宅」など数々の大曲を披く。自らの芸の研鑽を第一に舞台を勤めながら、大学での講義や部活動の指導、各地の学校での巡回公演など学生への普及活動にも取り組む。京都を中心に全国の数多くの公演に出演。同志社大学文学部卒業。京都市立芸術大学非常勤講師。公益財団法人 金剛能楽堂財団理事。


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